目次
1.BtoB企業が広告を成功に導くための3つのポイント
BtoB企業が広告運用で費用対効果を最大化させるためには、以下の3つのポイントが重要になります。
- 広告だけでは完結しないことを理解する
- 広告の目的とターゲットを明確にする
- 広告の予算を確保する
BtoB企業は多種多様であり、業種や企業の置かれている状況によって適切な広告の手法や運用方法が異なります。「他の企業がやっているから」と闇雲に広告を出しても成果はあまり期待できないでしょう。そこでこの章では、BtoB広告ならではの気をつけたい3つのポイントを解説します。
1.1 広告だけでは完結しないことを理解する
BtoB広告において特に重要なポイントは、広告だけでユーザーを購買に導くことが難しく、他施策とのかけ合わせが必要になる点です。
広告と聞くと、購買意欲の高い層に向けて自社の商品やサービスをアピールするイメージがあるかもしれません。BtoCでは意思決定者と広告を見る人が同じであるケースが多く、広告を見てから購買に至るまでのスピードが速いため成果につながりやすいでしょう。
ただしBtoBでは、社内で稟議を通す必要があり、複数の人が関与するため、広告が購買に直結するケースは稀で、意思決定までに長い時間を要します。BtoBにおいて広告は、あくまで購買につながる可能性のある顧客との接点づくりの機会なのです。広告で獲得した顧客が購買に段々と近づくように、中長期的なナーチャリング施策のような他の施策との連携も重要になります。
また、広告は短期的な集客効果は見込めますが、長期的に考えると効果が薄くなり、費用もかさみます。そのため、コンテンツマーケティングやSEOなど、費用を抑えて長期的に集客できる施策との組み合わせも大切です。コンテンツマーケティングやSEOは短期的に結果が出ないものの、長期的に安定した集客が期待できる上に、一度作れば追加の費用もかかりません。広告とコンテンツマーケティング・SEOはお互いの弱点を補強し合う関係にあると言えます。初期は広告に比重を置いて一定の数を集め、徐々にコンテンツマーケティング・SEOの比重を重くしていくことで安定した集客効果を得られるようになるでしょう。
1.2 広告の目的とターゲットを明確にする
同じ商品・サービスでもターゲットが置かれている状況によって、アプローチの方法が異なります。必ず「何のために」「誰に対して」広告を出すか明確にしましょう。その上で目的とターゲットにマッチした手法を選択します。手法については「BtoB広告の9つの代表的な手法」で紹介しているのでご覧ください。
以下の表は広告出稿の目的、狙うべきターゲット層、手法を一覧化したものです。
広告出稿の目的 | ターゲット | 手法 |
ターゲットをCVに導く | 顕在層 | ・リスティング広告(検索連動型) ・リマーケティング(リターゲティング)広告 |
自社を認知しているターゲットにより興味を持ってもらう 自社の商材を知らない層に認知してもらう |
準顕在層 潜在層 |
・ディスプレイ広告 ・SNS広告 ・タイアップ広告 ・業界紙への広告出稿 |
自社を知らない層に認知してもらう | 潜在層 | ・オフィス・ビル内への広告掲載 ・交通広告 ・マス広告 |
広告を出す目的によって狙うべきターゲット層が異なります。ちなみに、ターゲット層は以下の3つに分けられます。
ターゲット層 | 特徴 |
顕在層 | 課題解決の方針が明確で、商品やサービスを探している。 |
準顕在層 | 課題を解決したいものの、具体的な解決方法が分からない。 |
潜在層 | 実は課題があるものの、課題に気づいていない。 漠然とした悩みだけ抱えていて、解決方法を探していない。 |
1.3 広告の予算を確保する
広告施策を実行するには、もちろん社内で稟議を通す必要があります。広告を出す目的や期待できる効果に加え、広告費の提示も必要になります。
広告の予算を決定する方法はいくつかありますが、ここでは目標CV数から計算する方法を紹介します。この計算方法では、目標とするCV1回あたりのコスト(CPA)×目標CV数で求められます。例えばリスティング広告を運用する場合、1カ月で30件のCV獲得を狙い、目標CPAが2万円とした場合、30件×2万円=60万円が予算となります。
ただし、BtoB広告の場合、同じCVでも「Webサイトへの訪問」「資料のダウンロード」「お問い合わせ」「商談」というようにグラデーションがあり、CVとひとくくりに考えてはいけません。売上につながる可能性の高いCVを狙うほど広告予算は高くなるため、CVをどこに設定するか明確にし、納得してもらう必要があります。
また、広告の手法によって金額が大きく異なる上に、CPAも商材の単価によって変動するため、費用対効果を考えながら予算を決定しましょう。当たり前のことですが、広告を出せば必ず目標数値を達成できるわけではありません。予算に対してどれくらいの利益を出せたか確認し、定期的に広告費を見直すことも大切です。
2.BtoB広告の9つの代表的な手法一覧
BtoB広告の代表的な手法と特徴は以下の表の通りです。以降では「3.CVに導くための広告手法」「4.業界内で商材の認知度や興味を高めるための広告手法」「5.自社を知らない層への認知拡大のための広告手法」のように目的別に手法の詳細を解説します。
代表的な手法 | BtoBビジネスとの相性 | 掲載先 | ターゲット層 | ターゲティングのしやすさ | 費用相場 | 効果の可視化 | 準備コスト |
リスティング広告(検索連動型) | ○ | オンライン | 顕在層 | ○ | 低 | ○ | 低 |
リマーケティング
(リターゲティング)広告 |
○ | オンライン | 顕在層 | ○ | 低 | ○ | 低 |
ディスプレイ広告 | ○ | オンライン | 潜在層
準顕在層 |
△ | 低 | ○ | 高 |
SNS広告 | △ | オンライン | 潜在層
準顕在層 顕在層 |
△ | 低 | ○ | 高 |
タイアップ広告 | ○ | オンライン | 潜在層 | ○ | 中 | ○ | 低 |
業界紙への広告出稿 | ○ | オフライン | 潜在層 | ○ | 中 | △ | 高 |
オフィス・ビル内への広告掲載 | △ | オフライン | 潜在層
準顕在層 |
△ | 中 | △ | 高 |
交通広告 | △ | オフライン | 潜在層 | △ | 高 | △ | 高 |
マス広告 | △ | オフライン | 潜在層 | △ | 高 | △ | 高 |
3.CVに導くための広告手法
顕在層のユーザーを効率的にCVに導くには「リスティング広告(検索連動型)」「リマーケティング(リターゲティング)広告」がおすすめです。2つの手法の特徴から、顕在層へのアプローチに有効である理由を解説します。
3.1 リスティング広告(検索連動型)
リスティング広告(検索連動型)とは、ユーザーが検索したキーワードに合わせて広告を表示する手法です。例えば、「リスティング広告とは」と調べると検索画面に以下の広告が表示されます。
リスティング広告(検索連動型)は、初めて広告運用する場合におすすめの手法です。リスティング広告(検索連動型)の魅力は、キーワードに対して興味・関心の高い顕在層のユーザーに対してアプローチできる点です。キーワードに対して興味・関心が高いため、ニーズを捉えた文面であればクリックされる可能性が高く、BtoB広告の中では比較的売上に結びつけやすくなっています。
また、広告を出すキーワードや一日あたりのクリックの上限金額などを自由に設定できるため、広告に慣れていない方でも気軽に運用可能です。バナーや画像などクリエイティブにコストをかけることなく、文面を考えるだけで始められる手軽さもあります。さらに、文面を変えたことによる効果が比較しやすく、PDCAを高速で回しながらブラッシュアップできるのも魅力です。
リスティング広告の効果を高めるためには、クリックしたあとに表示されるLP(ランディングページ)が重要です。広告をクリックされても、LPがいまいちだとそのまま離脱される可能性があります。ターゲットの興味を惹きつけ、行動喚起させられるLPを作り、CVにつなげましょう。
おすすめシーン | ・初めて広告を運用したい ・CVに近い人に広告を出したい |
ターゲット層 | 顕在層 |
掲載場所 | 検索結果画面の上部 |
課金方法 | クリック課金:1クリックあたり数十円から2,000円を超えるものまで幅広い |
費用相場 | 月額数十万円 |
3.2 リマーケティング(リターゲティング)広告
リマーケティング(リターゲティング)広告とは、オウンドメディアやLPなどに一度訪れたユーザーに対して、最適なタイミングで再び広告を表示する手法です。一般的に、ディスプレイ広告やSNS広告で活用できる手法です。何らかの理由で離れてしまったユーザーに商品やサービスを思い出してもらい、もう一度検討してもらうきっかけになり、検討期間の長いBtoBにおいて有効とされています。
ただし、過度に広告を表示するとユーザーからの悪い印象を持たれかねません。また、プライバシー保護の観点からCookieの利用が制限され始めており、今後リターゲティング広告が活用できなくなる可能性もあります。リターゲティング広告だけでなく、複数の広告を併用して進めておくと良いでしょう。
おすすめシーン | ・一度自社のサイトに訪れたものの離脱した人に思い出してほしい ・自社に興味を持ってくれているユーザーに何度も広告を表示したい |
ターゲット層 | 顕在層 |
掲載場所 | Webサイト・アプリの広告枠 |
課金方法 | クリック課金:1クリック数十円 インプレッション課金:1,000回表示されるごとに数十円~数百円 |
費用相場 | 月額数十万円 |
4.業界内で商材の認知度や興味を高めるための広告手法
業界内にいる準顕在層や潜在層に、自社の商材により興味を持ってもらうためには以下の4つの手法が効果的です。ここでは、4つの広告の特徴や活用シーンを解説します。
- ディスプレイ広告
- SNS広告
- タイアップ広告
- 業界紙への広告出稿
4.1 ディスプレイ広告
ディスプレイ広告とは、Webサイトやアプリ内に画像、動画、テキストで広告を掲載する手法です。バナーで表示される場合もあり、バナー広告とも呼ばれます。
ディスプレイ広告の特徴は、画像や動画を使えるため、文字だけでは伝えられない情報やイメージを伝えられる点です。広告が目にとまりやすく、潜在層からの認知拡大や、準顕在層の関心を高めるために用いられることが一般的です。広告を表示する対象を限定できるため、BtoBにありがちなニッチな商材であってもターゲットからの認知を得やすくなっています。また、ビジュアルで惹きつけられるため、ビジュアル要素の強いホワイトペーパーや漫画方式のダウンロード資料などとの相性が良いと考えられます。
おすすめシーン | ・自社の商材に関連する記事を見た人に広告を出したい ・ビジュアルを駆使して商材の魅力・情報を伝えたい ・ホワイトペーパーをダウンロードしてほしい ・自社のことを認知してほしい |
ターゲット層 | 潜在層 準顕在層 |
掲載場所 | Webサイト・アプリの広告枠 |
課金方法 | クリック課金:1クリック数十円~数百円 インプレッション課金:1,000回表示されるごとに数十円~数百円 |
費用相場 | 月額数十万円 |
4.2 SNS広告
SNS広告は、TwitterやFacebook、Instagram、LINEなどのSNS内に広告を表示する手法です。性別や年齢など、ユーザーの登録情報を基にしたターゲティングができ、目的に合わせて幅広く活用できる特徴があります。また、SNSはユーザーによって拡散される性質があるため、本来狙っていない層に届く可能性があることも魅力です。オウンドメディアを始めたばかりのときの認知拡大のために利用されるケースもあります。
BtoB広告の場合、Facebook広告が用いられることが一般的です。Facebookは、ユーザーが性別や年齢、居住地域などを正確に登録している傾向があるため、より正確なターゲティングができます。また、フィードや検索結果画面、Messenger内などさまざまな広告枠へ出向できるのも特徴です。近年は、TwitterやInstagramを活用する企業も増えてきています。
おすすめシーン | ・自社への好感度を高めたい ・イベントの集客をしたい ・SNS特有の拡散によって認知度を高めたい |
ターゲット層 | 潜在層 準顕在層 顕在層 |
掲載場所 | フィードやタイムライン ストーリー 検索結果 アプリ内の広告枠 など |
課金方法 | クリック課金:1クリック数十円~数百円 インプレッション課金:1,000回表示されるごとに数百円 |
費用相場 | 月額数万円 |
4.3 タイアップ広告
タイアップ広告は、他のメディアと協力して自社の商品やサービスを伝える手法です。他メディア内の記事と同じフォーマットで公開されるため、ユーザーに嫌悪感を与えにくいメリットがあります。また、自社のターゲットが集まるメディアを選択することで、効率よくアプローチできます。記事の内容は、商品・サービスの紹介や担当者へのインタビューが一般的です。
おすすめシーン | ・ターゲットを絞って広告を出したい ・ターゲットからの認知度を高めたい ・ターゲットにとって自社の商材が有益であると伝えたい |
ターゲット層 | 潜在層 準顕在層 |
掲載場所 | 掲載先のメディア |
課金方法 | 掲載課金 |
費用相場 | 200万円程度 |
4.4 業界紙への広告出稿
特定の業界に特化した新聞や雑誌、Webメディアの広告枠に出稿する手法です。自社の商品やサービスが、特定の業界に向けたものであれば、大きな効果が期待できます。オフライン広告の中では、比較的ターゲットを絞りやすい点が特徴です。紙媒体が主流でしたが、近年は電子版も普及しつつあります。
おすすめシーン | ・業界を絞って広告を出したい ・ターゲットからの認知度を高めたい |
ターゲット層 | 潜在層 準顕在層 |
掲載場所 | 掲載先の広告枠 |
課金方法 | 掲載課金 期間保証型課金 |
費用相場 | 15万円~300万円前後(紙面) 月額10~50万円(電子版) |
5.自社を知らない層への認知拡大のための広告手法
自社自体や自社の商材を知らない層に対して認知を広めたい場合、オフラインによる以下の3つの手法がおすすめです。これらの手法は広告の制作や掲載に巨額の費用がかかりますが、自社を知らない・興味がないユーザーの視野に入るように広告を出せるため、認知度向上が期待できます。ここでは、3つの手法の特徴を解説します。
- オフィス・ビル内への広告掲載
- 交通広告
- マス広告
5.1 オフィス・ビル内への広告掲載
オフィスやビル内のエントランス、エレベーターなどに広告を掲載する手法です。近年は、サイネージを利用した動画広告も増えています。毎日利用する場所に掲載するため、オフィス内の企業の潜在層への認知拡大に役立ちます。
おすすめシーン | ・より幅広い層に認知してほしい ・オフィス・ビル内の企業のターゲットに認知を広げたい |
ターゲット層 | 潜在層 準顕在層 |
掲載場所 | エントランス エレベーター トイレ 喫煙所 など |
課金方法 | 期間保証型課金 |
費用相場 | 数十万円~数百万円 |
5.2 交通広告
電車やバスなど、通勤時に利用する公共交通機関に広告を掲載する手法です。多くのビジネスマンは、利用する時間や乗る場所がほぼ決まっているため、毎日同じ広告を目にすることになり、認知度向上が期待できます。また、ビジネスマンの利用頻度の高いタクシー内のサイネージに広告を掲載するBtoB企業が増えています。
おすすめシーン | ・沿線にある企業のターゲットに認知してほしい ・沿線に住むターゲットに認知してほしい |
ターゲット層 | 潜在層 |
掲載場所 | 電車 バス タクシー など |
課金方法 | 期間保証型課金 |
費用相場 | 数十万~数千万円(電車) 数十万円(バス) |
5.3 マス広告
テレビ、ラジオ、新聞、雑誌といったマスメディアの広告枠に掲載する手法です。マス広告のメリットは、オフライン広告の中でも、特に多くの潜在層への認知拡大に役立つ点です。マス広告は、視聴者層・読者層を考慮したターゲティングや配信地域によるターゲティングなどができます。また、採用のための認知拡大を兼ねて出稿するケースも増えています。
おすすめシーン | ・不特定多数に認知してほしい ・特定の番組や雑誌、新聞を見る人への認知を広めたい |
ターゲット層 | 潜在層 |
掲載場所 | テレビ ラジオ 新聞 雑誌 |
課金方法 | 期間保証型課金 |
費用相場 | 数百万円~数千万円(新聞) 1回あたり40万円~(テレビCM) 1回あたり数万円、月額数百万円~数千万円(ラジオCM) 数十万円~百万円前後(雑誌) |
6.まとめ
BtoB広告を出すときは、広告単体で考えず、複数の施策を組み合わせることが大切です。広告は短期的な成果が望めるものの、長期的に見ると効果が薄くなっていきコストもかさみます。広告と同時にコンテンツマーケティングに取り組むことで、広告の効果が薄くなっても安定した集客が期待できます。とはいえ、まずは広告で一定数を集めなければなりません。ターゲット層を考慮した適切な広告を選択して、認知拡大やリード獲得を目指しましょう。
また、近年は動画広告を活用する企業が出てきており、今後も新たな広告手法が出てくると予想されます。いずれの手法を選ぶにせよ、広告の役割を理解し、他施策と組み合わせて購買へと導く必要があると意識してください。