お役立ちコラム

BtoB領域の担当者が押さえておくべきマーケティング手法23選

「BtoB事業でマーケティングに取り組んでいるけど、なかなか結果が出ない状態が続いている。もっと良い手法があるのなら知りたい」
BtoBマーケティングに取り組んでいるマーケティング担当者の中には、このようなお悩みを持っておられる方も多いのではないでしょうか。

多くの企業が、なかなか成果を出すことができずに悩んでいます。中には、これ以上リソースを割いても意味がないと、マーケティングの計画自体を打ち切りにしてしまうところもあります。
マーケティングの手法は数多くありますが、「この手法を取れば100%望む結果が出る」といえるような完璧な手法は、残念ながらありません。しかし、自社の状況から打てる最善の手法を選び、正しく注力することで成功できた企業はいくつもあります。
行うべきなのは、マーケティングプロセスにおいて自社のボトルネックがどこにあるのかを把握した上で、ボトルネック改善のために既存の手法をうまく活用することです。

弊社アジタスでは、これまでに3,000社以上のマーケティングご支援を行い、多くの企業様の状況から、企業様の選択肢としてどのような手法が取れるのか、また、その中でも弊社が考える適切な手法についてお伝えしてきました。
この記事では、成果が認められてきたBtoBマーケティングにおける代表的な手法の一覧と、取り入れるべき手法を判断するポイントをお伝えします。
自社のボトルネックを改善する手法を見つけて、ぜひチャレンジしてみてください。

目次

1.BtoBマーケティングの手法を探す前に押さえるべき5つの基本プロセス

BtoBマーケティングの代表的な手法を理解する前に、まずBtoBマーケティングにおける基本的なプロセスを押さえておきましょう。自社に適した手法を選択するには、BtoBマーケティングの全体像を掴み、「自社が今悩んでいるのはBtoBマーケティングのどの部分なのか」「自社が注力すべきプロセスはどこか」を把握する必要があるからです。

BtoBマーケティングは、顧客の購買行動プロセスを踏まえて分類すると、下記のような図で表されます。

BtoBマーケティングの基本プロセス

顧客の購買行動プロセスは、①認知、②興味・関心、③製比較・検討、④購入、⑤継続という5つの段階を進みます。
例えば1000人が自社製品を認知したとすると、その内の300人が興味を持ち、50人が真剣に購入を検討し、10人が購入を決め、5人が継続するといったように、顧客はプロセスを進むごとに離脱していくのが普通です。

図で示したBtoBマーケティングの基本プロセス【STEP1】~【STEP5】は、多くの顧客を離脱させずにスムーズに次のプロセスへと進めるための企業の取り組みです。
仮に認知が1000人、次の興味・関心が10人程度であったとしたら、この移行箇所に問題が生じていることが考えられます。つまり、【STEP1】広報・ブランディングや【STEP2】のリード獲得に何らかの課題があり、見直すべきであるといった判断が可能なのです。

このように、どこに課題があるかを把握できれば、取るべき手段を選択できるようになります。次は各ステップの詳細について確認してみましょう。

【STEP1】広報・ブランディング

広報・ブランディングは、まだニーズが見えていない潜在層に、自社製品・サービスの存在を好意的に知ってもらうことが目的のステップです。

主に下記のような手法があります。

  • プレスリリース
  • ディスプレイ広告
  • ソーシャルメディア広告
  • オウンドメディア
  • オフライン広告

Webを利用した情報収集が当たり前になった近年では、BtoB取引において50%以上の顧客が、営業と接触する前の段階で製品購入の意思決定を終えているといいます。つまり、ニーズが顕在化したとき自社製品が認知されていなければ、顧客の検討段階にすら上がらない可能性が高いということです。
将来自社の顧客になり得る人を逃さないために、自社製品・サービスを好意的に認知してもらうことを目指しましょう。

広報・ブランディングに注力すべきなのは、認知度が低い企業です。
認知度を計測する方法として、市場リサーチや、自社製品・サービス名を打ち込んで検索されている指名検索数、ダイレクトにサイトURLへ訪問されている数などが参考にできます。自社の認知度が十分かを調べてみましょう。

【STEP2】リード獲得

リード獲得は、新規の見込み顧客の情報(企業名、担当者氏名、業種、職種、役職、メールアドレスなど)を多く獲得することが目的のステップです。

リード獲得の方法には2パターンあります。
1つめは、見込み顧客の側から問い合わせなどによってリードを獲得する、インバウンドの方法です。Webマーケティングのリード獲得は、基本的にこちらの効率化を目指すことになります。
主に下記のような手法があります。

  • リスティング広告
  • ランディングページ
  • ホワイトペーパー
  • ウェビナー
  • イベント・セミナー

2つめは、企業側からリード獲得のために見込み顧客に接触するアウトバウンドの方法です。昔ながらの方法ですが、特にオフラインの現場では今でも有力な方法です。
主に下記のような手法があります。

  • 展示会
  • ダイレクトメール
  • 自社の紹介を依頼する(リファラル)

BtoBマーケティングは、見込み顧客へのアプローチによって案件を創出しようとする取り組みです。【STEP3】のリード育成・絞り込みは、多くのリードを獲得できて初めて機能します。自社がターゲットにしている質の高いリードについて、なるべく多くの獲得を目指しましょう。

リード獲得に注力すべきなのは、保有リードが少なく、新規リードを獲得できていない企業です。
業種や事業内容、企業規模によって獲得目標数は変動します。Webマーケティングが有効な業界であれば、少なくとも月3桁のリード情報が獲得できる状態を目指したいところです。

【STEP3】リード育成・絞り込み

リード育成は、まだニーズが顕在化していない見込み顧客の記憶に残るようにコンタクトを取り続け、ニーズが顕在化した際に自社を想起してもらうことが目的のステップです。

主に下記のような手法があります。

  • メールマガジン
  • インサイドセールス
  • リターゲティング
  • ステップメール

将来的に新しい製品・サービスを導入する可能性があっても、今はその検討時期ではないという見込み顧客は多くいます。そうした場合は、見込み顧客にメールや電話でコンタクトを取り続けることで自社の名前を記憶に留めてもらい、導入の機会に選択肢として想起してもらうことが重要になるのです。
さらに、継続的な接触の過程で自社製品・サービスへの興味・関心を深めてもらえれば、見込み顧客の購買意欲を高めることにもつながります。見込み顧客のニーズのレベルを見極め、個別に対応を変えながらコンタクトを取り続けることが重要です。

リード育成の後には、絞り込みを行います。
絞り込みは、見込み顧客に対するスコアリング(属性・行動に応じた点数づけ)によって、受注の可能性が高い見込み顧客を絞り込むことです。絞り込んだ見込み顧客の情報をフィールドセールスに引き継いで、成約率を高めることを目的としています。

見込み顧客を絞り込んだ上でフィールドセールスに渡すことで、フィールドセールスは限られた相手に十分な時間をかけてアプローチができます。受注確度がはっきりとしない大勢の見込み顧客にアタックするよりも、遥かに効率的な営業が可能になります。

リード育成・絞り込みに注力すべきなのは、獲得したリードが受注に結びついていない企業です。
これも業種や事業内容、企業規模によって異なりますが、獲得できたリード数に対して受注が1%以下の場合は改善の必要があると考えられます。

【STEP4】商談・受注

商談・受注は、受注の可能性が高いと判断されたリードにアポを取り、基本的にはフィールドセールスが商談を行い、受注にこぎつけるステップです。
受注確度の高い見込み顧客をどれだけフィールドセールスに渡せたかが受注数に影響するため、【STEP1】~【STEP3】でいかに成果を出すかが鍵になります。

【STEP5】カスタマーサクセス

カスタマーサクセスは、受注後の顧客の満足度を高め、LTV(顧客生涯価値:顧客1人あたりが生涯で自社製品・サービスにもたらす利益)を最大化しようとする取り組みです。
顧客との間に信頼関係を構築し、できるだけ長い間自社の製品・サービスを使い続けてもらうこと、リプレイスの時期になっても変わらず自社製品・サービスを選択してもらうこと、アップセルやクロスセルの成功などを目的としたステップです。

主に下記のような手法があります。

  • ハイタッチ
  • テックタッチ
  • 新サービス・機能の紹介
  • 問い合わせフォーム
  • FAQコンテンツ
  • ユーザーコミュニティ

BtoBは1件あたりの検討期間が長く、取引価格も大きいため、乗り換えにかかるコストが大きいことから顧客の維持が容易でした。しかし、SaaSなどの比較的低単価なサブスクリプション型サービスは、導入の手間が少なくサービスの乗り換えも容易です。業界にもよりますが、一度顧客関係になれば長期間契約してもらえるという従来の前提は崩れつつあります
新規顧客の獲得は大切ですが、カスタマーサクセスによって顧客との関係を強化し、関係を維持することも重要
なのです。

カスタマーサクセスに注力すべきなのは、解約率が高い企業です。
特にサブスクリプション型ビジネスを行っている企業であれば、月間の解約率を3%以下に留めるのが望ましく、10%以上になるようであれば早急に手を打つ必要があるでしょう。

2.広報・ブランディングの手法6選

BtoBマーケティングの全体像を確認したところで、具体的な手法について確認していきましょう。
広報・ブランディングの主な手法は、下記のようになっています。

手法 企業の状況 価格 成果リードタイム 社内運用人数
プレスリリース
  • 新製品・サービスを公開する予定がある。
  • 自社の知名度が低い。
サービスサイト配信:三万円前後 短期 1人以上
ディスプレイ広告
  • Webでの訴求が有効な企業がターゲットである。
  • 自社サイトのPV数が少ない。
  • 自社製品の認知度が低い。
運用費:月額数十万円 短期 1人以上
オウンドメディア
  • 課題解決のために検索を行うような企業がターゲットである。
  • ターゲットの範囲が広い。
  • 自社サイトのPV数が少ない。
  • 将来を見据えた長いスパンでの計画が可能。
立ち上げ:百万~数百万円
運用費:月額数十万~百万円
中~長期 2人~3人以上
ソーシャルメディア運用
  • 自社製品のターゲット層とソーシャルメディアのユーザー層が一致している。
  • ソーシャルメディアを活用できる社員がいる。
運用費:月額十万~数十万円 中~長期 1人以上
ソーシャルメディア広告
  • 自社製品のターゲット層とソーシャルメディアのユーザー層が一致している。
運用費:月額数万円 短期 1人以上
オフライン広告
(マス広告、交通広告)
  • Webマーケティングに取り組んできたが頭打ちになっている。
  • ターゲットの範囲が広い。
  • インターネットが中心ではない業界で、Webでの認知獲得が難しい商材を扱っている。
数十万~数千万円 短期 1人以上

※成果リードタイムイメージ:手法に取り組み始めてから、各章の目的に沿った何らかの効果が出るまでの期間の長さ
短期:数ヶ月  中期:半年~1年 長期:1年以上

広報・ブランディングは「多人数から好意的に認知を得ること」を目的としたステップですが、それが自社サイトに集客を促すことにも直結するため、集客しリード獲得を目指す【STEP2】の手法とも重なる部分があります。この記事では広報・ブランディングに分類していますが、他の領域にもまたがる手法があることは覚えておいてください。

【1】プレスリリースを出す

プレスリリース_スクリーンショット
出典:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000002.000101975.html

プレスリリースとは、自社の新製品などの情報をマスメディアに向けて発信することで、ニュースサイトや新聞、雑誌などの媒体で取り上げられることを期待する広報の手法です。

プレスリリースは、以下のような状況の企業に特におすすめです。

  • 新しい製品・サービスや、新機能を公開する予定があり、多くの見込み顧客の認知を獲得したい。
  • 自社の知名度が低く、外部メディアを通すことで、自社製品・サービスの認知とともに信頼感も向上させたい。

プレスリリースによって複数のメディアから報道されれば、プレスリリースの配信料金のみで大勢の目に留まることができるため、費用以上の認知獲得を望めます
また、出版社からニュースバリューがあると判断され採用されれば、第三者が間に入ってのニュースとなるため、ユーザーからも製品・サービスへの信頼感を持たれやすくなります。
今まで行ったことがない企業には、ぜひともおすすめしたい手法です。

プレスリリースのサービス会社の中には、1回の配信につき約3万円から可能であったり、月額で複数本の配信を可能としている会社もあります。数百、数千ものメディアサイトと提携した会社のサービスを利用すれば、少なくともWeb系メディアサイトへの転載は期待できます。認知度向上のため、積極的にプレスリリースを行っていきましょう。

【2】ディスプレイ広告を出す

ディスプレイ広告_スクリーンショット
出典:https://www.yahoo.co.jp/

ディスプレイ広告とは、Webサイトやアプリ内の広告枠に画像・動画・テキストで表示するWeb広告です。写真やイラストなど、ユーザーに視覚的に訴える広告を表示できます。

ディスプレイ広告は、以下のような状況の企業に特におすすめです。

  • Webで訴求が有効な企業がターゲットである。
  • 自社製品・サービスが全く認知されておらず、自社サイトのPV数が少ない。
  • Webでの検索数がある程度見込める業界だが、自社製品の認知度が低い。
  • オウンドメディアを保有しておらず知名度獲得の手段を持っていないが、なるべく早く認知を広めたい。

ディスプレイ広告は、広告を表示するユーザーの属性(年齢、性別、関心など)を指定できるため、マス広告などと比較すると企業が想定するターゲットの目に届けやすいというメリットがあります。また、広告を配信できる範囲が広く、多くの潜在層から早く認知を獲得できます。
ただし、扱っている商材がそもそもWebで検索されにくい内容であった場合は、ターゲットの目に留まるように広告を出稿すること自体が難しく、ディスプレイ広告では成果が出ない可能性があります。
自社のターゲットを明確にした上で、ディスプレイ広告が有効であるかを判断しましょう。

ディスプレイ広告は、表示するだけで料金が発生するもの、クリックされて初めて料金が発生するものなど課金方法もさまざまです。掲載期間や出稿数にもよりますが、十分な成果を得ようと思うのであれば月額数十万円以上の予算は確保する必要があるでしょう。

【3】オウンドメディアで注目を集める

オウンドメディア_スクリーンショット
出典:https://be-marke.jp/

オウンドメディアとは、広義ではコーポレートサイトやメールマガジン、広報誌など広い範囲でのコンテンツを指しますが、一般的には自社が情報発信を目的に保有するWebメディアやブログなどのコンテンツを指します。
業界ノウハウや解説など、ユーザーにとって有益な情報を自社のメディアで継続して発信することによって、検索エンジンから見込み顧客を呼び寄せ、見込み顧客との接点を作ります。

オウンドメディアは、以下のような状況の企業に特におすすめです。

  • Webでの訴求が有効で、課題解決のために検索を行うような企業がターゲットである。
  • ターゲットの範囲が広く、多くの見込み顧客を集められそうな商材を扱っている。
  • 自社製品・サービスが全く認知されておらず、自社サイトのPV数が少ない。
  • 将来を見据えた長いスパンでの計画が可能で、大きな成果が得られる手法を選びたい。

オウンドメディアはコンテンツ制作を始めてから成果が見えるようになるまでに、少なくとも半年以上を待たなければなりません。その間もコンテンツ制作を続ける必要があるため、実施によって多くの集客が見込める商材を扱っている企業や、長期間の投資が可能な企業に特に向いている手法です。 オウンドメディアは、初見の集客手段として以外にも、会員登録などのリード獲得に誘導したり、質の高いコンテンツ提供によって見込み顧客の関心を深めるリード育成を行ったり、カスタマーサクセスに応用したりすることができる優れた手法です。
また、一度制作したコンテンツはサイトを閉鎖しない限り自社の資産として蓄積でき、豊富な情報を保有するメディアとして長期にわたるほど価値を高めることができます。

ただし、社内でオウンドメディアを運用する場合は制作のための人的コストが、外注する場合には少なくない外注費が継続してかかります。オウンドメディアを実践する場合は、継続的なコンテンツ制作のための環境づくりを行う必要があります。

【4】ソーシャルメディアのアカウントを運用する

ソーシャルメディア運用_スクリーンショット
出典:https://facebook.com/necjapan/

ソーシャルメディア(Facebook、Twitter、Instagramなど)を運用することによって、それぞれのソーシャルメディアのユーザーに製品・サービスを認知させる手法です。投稿したコンテンツが拡散されれば、潜在層から一気に認知を得ることが期待できます。また、単体での情報発信だけではなく、オウンドメディアと連携して記事やWebサイトへの流入を誘うこともできます。

ソーシャルメディア運用は、以下のような状況の企業に特におすすめです。

  • 自社製品のターゲット層と、ソーシャルメディアのユーザー層が一致している。
  • 定期的な情報発信やソーシャルメディア上での交流を苦にせず、ソーシャルメディアを活用できる社員がいる。
  • 予算があまりないため、運用コストをかけず認知を獲得できる手法を選びたい。

ソーシャルメディアで認知を得るには拡散力が必要ですが、拡散力を獲得する工程には決まった戦略がありません。企業が自社アカウントで拡散力を獲得するためには、担当者がソーシャルメディアを活用できる人物であるかによるところが大きいのが現状です。
BtoB企業の中には、発信力のある社員が自らアカウントを持ち、他者との積極的な交流やノウハウの投稿などでフォロワー数を増やし、自社製品・サービスの情報拡散につなげている例も見られます。
交流のしやすいツールであることを生かしてコネクションを築いたり、潜在層の気軽な問い合わせ先と位置づけてリード獲得に利用したりと、ソーシャルメディアは認知獲得のみに留まらないさまざまな応用が可能です。発信力のある社員が携われるのであれば、運用を試す価値はあるでしょう。

ソーシャルメディアはほとんどが無料で始められ、低単価で運用できます。BtoBのソーシャルメディア運用は難しいといわれますが、使い方によっては費用対効果も高く、大きな武器になり得る手法といえます。

【5】ソーシャルメディア広告を出す

ソーシャルメディア広告_スクリーンショット
出典:https://twitter.com/

ソーシャルメディア広告とは、Facebook、Twitter、Instagram、LINEなどのソーシャルメディア内に表示されるWeb広告です。各ソーシャルメディアのデザインや枠組みに溶け込むような形で、フィード(タイムライン)上で投稿の一部のように表示できます。ユーザーが煩わしさを感じるような主張しすぎる広告と違い、自然な認知を期待できます。

ソーシャルメディア広告は、以下のような状況の企業に特におすすめです。

  • 自社製品のターゲット層と、ソーシャルメディアのユーザー層が一致しており、広告で認知拡大が見込める。
  • 自社製品・サービスが全く認知されておらず、自社サイトのPV数が少ない。

ソーシャルメディア広告は認知獲得に有効な手法ではあるものの、訴求できる対象は各ソーシャルメディアの利用者だけです。しかし、ソーシャルメディアを普段から利用しているようなターゲット(例えばTwitterでは20代~30代のIT関連業界など)が多ければ、それだけ接触時間が長くなるため、目に留まる可能性が高まります。

ソーシャルメディア広告も、表示するだけで料金が発生するもの、クリックされて初めて料金が発生するものなど課金方法を選べます。月額数十万程度は予算を確保しましょう。

【6】オフライン広告を出す

オフラインで広告を出稿し、不特定多数の人の注目を集める手法です。テレビ・新聞・ラジオ・雑誌のマス広告や、電車やタクシー内に掲示する交通広告などが該当します。
オフライン広告は、Webでは訴求できない業界なども含め、広範囲の人から認知を得られる点が特徴です。

オフライン広告は、以下のような状況の企業に特におすすめです。

  • Webマーケティングに取り組んできたが頭打ちになっており、これまでとは違うやり方で認知を獲得したい。
  • BtoBの中でもターゲットの範囲が広い商材で、CMにより多くの見込み顧客からの認知が期待できる。
  • インターネットが中心ではない業界で、Webでの認知獲得が難しい商材を扱っている。

テレビ、新聞、ラジオなどのCMに特に向いているのは、BtoBの中でもターゲットの範囲が広い商材です。雑誌広告の場合は、ビジネス誌や業界紙などにニッチな商材を掲載し、認知を獲得しようとする例もあります。

また、Webではターゲットに訴求しづらい業界である場合も、オフライン広告であれば認知を得られる可能性があります。
テレビCMや新聞など公共性の高いメディアを通じて世間的な知名度を高められれば、自社の信頼感を醸成することにもつながるため、ブランド力を高めたい場合にもオフライン広告は有効です。

オフライン広告は費用が高額になるケースが多く、少なくとも数十万~数百万円、時には数千万円に達します。特にテレビCMなどは、ターゲットの範囲が狭いBtoBでは費用対効果が見合わないと敬遠されがちです。
しかし、製品の導入を最終的に決定する管理職は40代以上が多く、40代以上の層はインターネットよりもテレビの視聴時間が長い傾向があります。認知を得る目的であれば、テレビCMを短期集中で流した方が、Web広告に投資するより成果を上げられる可能性があるのです。

3.リード獲得の手法8選

リード獲得の主な手法は、下記のようになっています。

手法 企業の状況 価格 成果リードタイム 社内運用人数
リスティング広告
  • 自社サイトへの流入やCVが少ない。
  • 競合が検索結果で上位表示されており短期で結果を出したい。
  • 競合が少ないニッチな業種である。
  • 商材が高単価またはサブスクリプション型サービスである。
運用費:月額数十万円 短期 1人以上
ランディングページ
  • Web広告を使って集客しているが、リード獲得に結びついていない。
  • Webを利用したリード獲得手法のコンバージョン率が低い。
委託:数万~数十万円 短期 2人以上
ホワイトペーパー
  • Webサイトへの集客はあるが問い合わせや資料請求には至っていない。
  • リードに個別対応を行いたいがニーズを把握できていない。
委託:十万~数十万円 短~中期 1人以上
ウェビナー
  • リード獲得が十分にできておらずコンテンツも用意できていない。
  • 大きなコストをかけずにリードを獲得したい。
運用費:数千~数万円 短~中期 2~3人以上
展示会
  • リード情報を獲得したいターゲットが展示会に出展している。
  • リード獲得数が少ない。受注に結びつくような質の高いリードを獲得できていない。
  • Webだけでは良さを伝えきれない有形商材を扱っている。
出展費:数十万~数百万円 中~長期 3~5人以上
ダイレクトメール
  • 展示会に出展予定がある。
  • Web経由ではリード情報獲得を見込めない商材を扱っている。
委託:数千~数十万円 短期 1人以上
セミナー・イベント
  • 自社の認知度が低い。
  • Web経由ではリード情報獲得を見込めない商材を扱っている。
数十万~数百万円 短期 3~5人以上
リファラル
  • 予算が少なくリード獲得のためにコストをかけられない。
  • 即購買に直結するリード情報を獲得したい。
  • Web経由ではリード獲得を見込めない商材を扱っている。
数万円(成果報酬) 読めない 1人以上

※成果リードタイムイメージ:手法に取り組み始めてから、各章の目的に沿った何らかの効果が出るまでの期間の長さ
短期:数ヶ月  中期:半年~1年 長期:1年以上

【7】リスティング広告を出す

リスティング広告_スクリーンショット

リスティング広告は、検索エンジンの検索結果画面に表示されるテキストの広告です。
ユーザーが検索したキーワードに連動して広告が表示されるため、ユーザーのニーズに合致した内容が表示されやすく、ニーズが顕在化している層の集客が期待できます。

リスティング広告は、以下のような状況の企業に特におすすめです。

  • Webでの検索が見込める業界だが、自社サイトへの流入やCVが少ない。
  • 競合が検索結果で上位表示されており、自社がすぐに上位を獲得することは難しいが、なるべく短期で結果を出したいと考えている。
  • 競合が少ないニッチな業種である。
  • 商材が高単価である、またはサブスクリプションなどユーザーに継続させることで利益を出すビジネスを行っている。

リスティング広告は検索と連動しているため、検索自体が行われにくい製品やターゲットの場合は成果を出すことができません。ただし検索需要が高い場合であっても競合が多く、広告のクリック単価が高額になる可能性があります。
検索需要はあるが、ターゲットが広範囲ではなく競合が少ないニッチな業種であれば、安価で広告を表示できます。また、一度契約できれば継続課金によって利益を拡大できるサブスクリプション型サービスや、一度の契約単価が高額の商材であれば、広告単価が上がっても十分収益につなげられるため、リード獲得の意味があります。
リスティング広告は出稿のために画像などを用意する必要がなく、短期で成果測定が行えるため、PDCAを回しながらすぐに結果を出したい場合にも向いています。

成果を出すためには月額数十万円ほどは予算を確保したいところです。最初は少額で試し、効果が期待できそうであれば増額するなど工夫して、リスティング広告を最大限に生かしましょう。

【8】ランディングページを公開する

ランディングページ_スクリーンショット
出典:https://azitas.co.jp/lp/sp21/b/

ランディングページとは、広義では検索エンジンなどを通じて最初にアクセスされるWebページです。狭義では、Web広告の流入先として設定され、コンバージョン率を高めるために制作されるWebサイトをいいます。本記事では後者について説明します。
ランディングページは縦長で構成されることが多いものの、BtoBにおいては問い合わせや資料請求、ホワイトペーパーダウンロードのための入力フォームが設置されたシンプルな構成の場合もあります。外部へ遷移するようなリンクの類が極力排除され、ページ単体で製品・サービスの要点がまとめられているのが特徴です。

ランディングページは、以下のような状況の企業に特におすすめです。

  • Web広告を使って見込み顧客を集客しているが、リード獲得に結びついていない。
  • ホワイトペーパー、資料請求など、Webを利用したリード獲得手法のコンバージョン率が低い。

Web広告を出稿しても、単にWebサイトのトップに誘導するだけでは、何を見るべきか分からずユーザーにすぐに離脱されてしまいます。特定の目的を持ったランディングページをWeb広告の流入先に設定することで、ユーザーの関心を引き、コンバージョンにつなげやすくするのです。

ランディングページは、制作を外部に委託した場合は数万~数十万円の費用がかかります。リスティング広告などの出稿の際にはセットでランディングページの制作も検討しましょう。

【9】ホワイトペーパーを公開する

ホワイトペーパーは、見込み顧客にとって価値のある情報を企業が分かりやすくまとめたPDFなどの資料を指します。ノウハウや業界の独自調査レポート、トレンド解説など、企業の知見を生かして制作します。
ホワイトペーパーはリード情報と引き換えにダウンロード可能な資料として自社サイトに設置し、リード獲得の手段として用いられるのが一般的です。

ホワイトペーパーは、以下のような状況の企業に特におすすめです。

  • Webサイトへの集客はあるが問い合わせや資料請求には至らずリード獲得ができない。
  • リードに個別対応を行いたいがニーズを把握できていない。

リード獲得の手段に問い合わせフォームや資料請求のみを設置していると、購買意欲が芽生えていない見込み顧客にとってはハードルが高く、コンバージョンにつながりにくい問題があります。ホワイトペーパーはテーマを持って制作するため、見込み顧客にとって興味のあるテーマであれば、「読みたい」という意識からダウンロードしてもらえる可能性が高まります。
また、見込み顧客のダウンロード数が多いホワイトペーパーが何かが分かれば、ニーズがどこにあるのかを推測し、その後の施策の参考にすることができます。

ホワイトペーパーの制作を外部委託する場合、1種類で十万~数十万円程度が必要です。ホワイトペーパーで成果を出すためには、見込み顧客のニーズに沿って複数のホワイトペーパーを公開することが推奨されるため、ある程度の費用が必要になることを考慮しましょう。制作のためのノウハウが社内にあるようなら、内製もおすすめです。

【10】ウェビナーを主催する

ウェビナーは、Webとセミナーを合わせた言葉で、オンライン上で開催されるセミナーを指します。
ZOOMなどのオンライン配信ツールを利用してセミナーを開催し、参加を希望するリードの情報を獲得する手法です。
時間や場所を選ばないためユーザーが気軽に参加でき、開催側も会場の設営や受付などが必要ないため、簡単に開催することができます。

ウェビナーは、以下のような状況の企業に特におすすめです。

  • Webでの訴求が可能な業界であるが、リード獲得が十分にできておらず、そのコンテンツも用意できていない。
  • 大きなコストをかけずにリードを獲得したい。

ウェビナーは特定のテーマで開催することで、そのテーマに関心のある層の参加を促し、リード獲得につなげられます。録画しておけば、そのまま動画コンテンツとしてストックし今後のリード獲得に使えるほか、内容をホワイトペーパーに転用したりとさまざまな使い方ができます。
また、ある程度の顧客リストを既に所持している企業であれば、ウェビナーはリード育成の手法としても活用できます。

ウェビナーはカメラ付のPCとオンライン配信ツールさえあれば機材もほとんど必要なく、数千~数万円から開催できるため、予算が少ない中でも取り組みやすい手法といえます。ただし、セミナーへの集客のために広告費などを要する場合があるため、注意しましょう。

【11】展示会に参加する

展示会に出展または参加し、名刺交換によってリードを獲得する手法です。日本では専門性の高いBtoB展示会が定期的に開催されています。

展示会への参加は、以下のような状況の企業に特におすすめです。

  • リード情報を獲得したいターゲットが展示会に出展している。
  • リード獲得数が少ない、または受注に結びつくような質の高いリードをなかなか獲得できずにいる。
  • Webだけでは良さを伝えきれない有形商材を扱っている。

展示会は製造業向け、IT業界向けなどテーマを持って開催されることが多く、それぞれのテーマについて関心の高い層が集まります。自社の製品・サービスに関連した展示会に出展すれば、自社がターゲットとしている属性のリード情報を一度に大量獲得できるチャンスです。
また、現在でもオフラインでの文化が根強い製造業などでは、Webでのリード獲得が難しい場合もあります。そういった企業では、展示会で名刺交換を行い、電話でアポを取っての訪問営業が変わらず有力です。
展示会では製品の現物を見たり触ったりすることができるため、有形商材を扱っている企業であれば、Webより製品の魅力を伝えやすい点もメリットといえるでしょう。

展示会は、一度の出展に数十万~数百万がかかります。展示会の規模にもよりますが、出展費、運搬費、ブース設営費、人件費などが必要になるためです。しかし、一度に有力なリードを多数獲得できる手法はBtoBにおいて他になく、コストはかかっても強力な手法といえます。

【12】ダイレクトメールを送る

ターゲットの企業にパンフレットや申込書などを送付し、資料請求や、セミナー・イベントの申し込みを返信してもらうことでリードを獲得する手法です。

ダイレクトメールは、以下のような状況の企業におすすめです。

  • 展示会に出展予定があり、出展を機に送付先企業のリード情報を獲得するため招待したい。
  • Web経由ではリード情報獲得を見込めない商材を扱っている。

ダイレクトメールはメールマガジンなどと比べると開封率・行動喚起率が高い傾向にあり、Webでは届けにくい業界にもアプローチできます。また、展示会に出展予定がある場合は、入場券をターゲット企業に送付することで、自社ブースを訪問してもらえる可能性があります。

ダイレクトメールは送付数や送付内容によって価格が変動しますが、郵送先で開封されないまま廃棄されることがないようにと封筒の表示などを工夫すると、一通につき数百円はかかります。外部に委託するとしても、数十万の予算を見込んでおきましょう。

【13】セミナーやイベントを主催する

オフラインでセミナーやイベントを開催し、参加者のリード情報を獲得する手法です。
場合によっては著名人や業界人を講師に招くなどして、自社の製品・サービスを認知していない層も含めて集客します。

セミナーやイベントの主催は以下のような状況の企業に特におすすめです。

  • 自社の認知度が低くブランディングを図る必要がある。
  • Web経由ではリード獲得を見込めない商材を扱っている。

セミナー・イベントは、幅広い層の関心を呼ぶテーマを設けることで、多くの集客を見込めます。講師として著名人を招くことができれば、そのつながりから自社を認知してもらえる可能性も高まります。
1対1の商談よりも気軽で、見込み顧客が参加しやすいため、商談前のステップとして置くことで見込み顧客の心理的なハードルを下げるリード育成の役割も果たします。

セミナーやイベントは、開催の規模にもよりますが、会場費や広告費、機材の準備などが必要であり、数十万~数百万円を要します。登壇者を招く場合は、さらに謝礼金が必要になります。

【14】自社の紹介を依頼する(リファラル)

既存の顧客や知人、または紹介サービスを利用して自社を紹介してもらい、個人情報をやり取りしてリードを獲得する手法です。

リファラルは、以下のような状況の企業に特におすすめです。

  • 予算が少なくリード獲得のためにコストをかけられない。
  • 獲得したリードからなかなか受注に結びつかず、即購買に直結するリード情報を獲得したい。
  • Web経由ではリード獲得を見込めない商材を扱っている。

リファラルは、紹介が成立した際にマージンや謝礼を支払う成果報酬の形式であるため、リード獲得のコストを削減することができます。また、見込み顧客は紹介者の知人であるケースが多く、信頼感を持たれやすいことや、最初から受注を検討している見込み顧客の紹介のため受注に直結しやすいというメリットがあります。

リファラルでは、成果報酬として数万円を支払うのが一般的です。リード1件に数万円は高いと感じるかもしれませんが、受注の可能性が高いリードを獲得できると考えれば、総合的に見て低コストの手法といえるでしょう。

4.リード育成・絞り込みの手法4選

リード育成・絞り込みの主な手法は、以下のようになっています。

手法 企業の状況 価格 成果リードタイム 社内運用人数
メールマガジン
  • 将来検討の可能性がある見込み顧客の情報を大量に保有している。
  • 予算は多くないが見込み顧客との関係を継続したい。
  • 優先度の高いリードにしか対応していない。
MA運用費:数万~数十万円 中~長期 1~2人以上
インサイドセールス
  • フィールドセールスの人数に対してアポや商談数が不足している。
  • 見込み顧客のニーズのレベルが分からないままリードが供給され商談が非効率になっている。
委託:数十万~ 中~長期 1人~5人以上
リターゲティング
  • 何度か自社を訪問していたが離脱してしまった見込み顧客が多い。
  • 新規顧客の獲得が先細りしている。
運用費:月額数十万円 短期 2人以上
ステップメール
  • 新規リードの数が多過ぎてフォローが追いついていない。
  • インサイドセールスを導入しているがメールのやり取りに時間がかかり個別ヒアリングの時間を圧迫している。
MA運用費:数万~数十万円 中~長期 1~2人以上

※成果リードタイムイメージ:手法に取り組み始めてから、各章の目的に沿った何らかの効果が出るまでの期間の長さ
短期:数ヶ月  中期:半年~1年 長期:1年以上

【15】メールマガジンを配信する

メールマガジンは、見込み顧客のリストに業界ノウハウや自社製品のためになるポイント、業務に役立つ内容のメールなどを定期的に配信する手法です。見込み顧客の興味・関心を深めたり、ニーズが顕在化した際に自社を想起してもらうことを目的とします。

メールマガジンの配信は、以下のような状況の企業におすすめです。

  • 今は検討段階にないものの、将来検討の可能性がある見込み顧客の情報を大量に保有している。
  • 予算は多くないが、見込み顧客との関係を継続したい。
  • Webでの訴求が可能な業界で、見込み顧客の情報は蓄積できているが、アプローチは電話でアポを取るのみで優先度の高いリードにしか対応していない。

メールマガジンは、定期的な配信で見込み顧客との接点を絶やさないようにしつつ、URLへのクリック率や開封率などをニーズレベルの指標にできます。
見込み顧客の情報が大量にあるのに、アプローチの方法が電話や訪問が中心で、ごく一部のリードにしか対応できていないとしたら、保有リードを育成するメルマガ配信は非常に有効です。

メールマガジンは、メール送信自体にはお金がかかりません。ただし、企業によっては数千というリードに対して定期的にメールを配信する必要があるため、規模が大きい企業ほどメール配信ツールかMA(マーケティングオートメーション)を導入してのメール配信管理が必須になります。いずれも月額数万円から数十万円で使用可能です。
メールマガジンは配信内容を都度考える必要がありますが、オウンドメディアで記事を更新するよりは手軽に配信でき、デメリットがあまりないため、リソースがあれば着手して損はありません。

【16】インサイドセールスを導入する

インサイドセールスは、電話やメール、オンライン商談ツールなどで見込み顧客に個別アプローチを行い、非対面で営業活動を行う部門を指します。
見込み顧客にヒアリングを行って製品に対するニーズの段階を探り、受注の可能性が高いと判断した見込み顧客を外勤営業(フィールドセールス)に引き継いだりと、営業を効率化し成約率を向上させる活動を行います。

インサイドセールス導入は、以下のような状況の企業に特におすすめです。

  • フィールドセールスの人数に対してアポや商談数が不足している。
  • 見込み顧客のニーズのレベルが分からないままリードが供給され商談が非効率になっている。

インサイドセールスを導入することによって、獲得したリードのニーズレベルを効率良く確認でき、商談につなげる数を増やすことができます。
また、ニーズのレベルを確かめ、見込み度合いの高いリードをフィールドセールスに引き渡すことで、商談の成約率を高められます。

インサイドセールスは数十万円から代行業者に依頼することも可能ですが、見込み顧客に直接接触する最初の人員となるため、社内で専任のインサイドセールスを確保し育成することが理想です。

【17】リターゲティング広告を出稿する

リターゲティング広告は、自社サイトに一度来訪した後に離脱した見込み顧客に対して、訪問先のWeb広告(ディスプレイ広告やソーシャルメディア広告)を表示するようにし、自社を想起してもらう手法です。

リターゲティング広告は、以下のような状況の企業に特におすすめです。

  • 何度か自社を訪問していたが離脱してしまった見込み顧客が多い。
  • 新規顧客の獲得が先細りしており、失注顧客からリードを獲得したい。

BtoBは、製品の導入にあたって検討期間が長くなる傾向にあります。そのため、一度は自社製品・サービスを検討対象に入れたとしても即決はされず、他の業務が忙しくなれば忘れられてしまう可能性があります。
また、見込み顧客が興味を持って自社製品・サービスを見ていたとしても、リプレイス時期が来ていなければ検討段階には入りません。適切な時期ではなかったために途中で離脱され、そのまま思い出されずに終わるケースもありえます。
リターゲティング広告によって離脱した見込み顧客に広告を表示すれば、自社を想起してもらうチャンスとなり、商談につなげられるかもしれません。

リターゲティング広告は数十万円程度の予算を確保しましょう。
ただし、リターゲティング広告に利用するCookieは、Googleの発表によれば今後廃止される予定です。リターゲティング広告を利用する際は、詳細を確認してください。

【18】ステップメールを配信する

ステップメールは、用意しておいた複数のメールについて、ユーザーのアクションに応じて段階的にメール配信を行う仕組みです。BtoBマーケティングにおいては、ユーザーとの接点を維持し、興味・関心を深めることを目的に行われます。

ステップメールは、以下のような状況の企業に特におすすめです。

  • 新規リードの数が多過ぎてフォローが追いついていない。
  • インサイドセールスを導入しているがメールのやり取りに時間がかかり重要な個別ヒアリングの時間を圧迫している。

ステップメールは、あらかじめ設定したシナリオ通りにメール配信を行います。決まったやり取りを返すだけの定型化したメール業務であれば、ステップメールを利用することで効率化できます。メール業務が効率化されれば、インサイドセールスは架電などの重要な業務に時間を割くことができます。

ステップメールを実施するには、メール配信ツールかMA(マーケティングオートメーション)を導入してのメール配信管理が必須になります。いずれも月額数万円から数十万円で使用可能です。

5.カスタマーサクセスの手法5選

カスタマーサクセスの主な手法は、下記のようになっています。

手法 企業の状況 価格 成果リード 社内運用人数
ハイタッチ
  • 大口顧客にも小口顧客と同じレベルのフォローしかできていない。
  • 解約率が高く取引が続かない。
中~長期 3人~2人以上
テックタッチ
  • 新規顧客獲得の施策が中心で問い合わせ対応しか行っていない。
  • サブスクリプション型サービスで継続利用が重要な商材を扱っている。
数万~数十万円 中~長期 2人~3人以上
新サービス・機能の紹介
  • 納品先が限定されターゲットの数が少ない。
  • 新規の獲得が頭打ちになっている。
短期 1人以上
問い合わせフォーム
  • 改善すべき箇所を顧客から収集できていない。
  • 予算が少ない。
数万~数十万円 短期 1人以上
ユーザーコミュニティ
  • 提供している製品・サービスの解約率が高い。
  • サブスクリプション型サービスで継続利用が重要な商材を扱っている。
百万~数百万円 中~長期 3人~4人以上

※成果リードタイムイメージ:手法に取り組み始めてから、各章の目的に沿った何らかの効果が出るまでの期間の長さ
短期:数ヶ月  中期:半年~1年 長期:1年以上

【19】ハイタッチを実施する

ハイタッチは、LTVが高い顧客に1対1で綿密なサポートを行い、契約を継続してもらうことで利益を上げようとするカスタマーサクセスの分類を指します。
主な手法として、製品の機能カスタマイズの個別対応や、製品を使いこなしてもらうための社員教育、コンサルティング支援などがあります。

ハイタッチは、以下のような状況の企業におすすめです。

  • カスタマーサクセス専門のチームができるほど事業が大きくなっている段階で、大口顧客にも小口顧客と同じレベルのフォローしかできていない。
  • 大口の顧客と取引が決まっても、解約率が高くなかなか取引が続かない。

大口顧客は、自社の売上に最も影響がある相手です。BtoBにおいては、売上のほとんどが大口顧客数社との取引であるといった例も少なくありません。そうした場合は新規獲得よりも既存顧客の維持の方が重要であり、個別対応で顧客の満足度を高めることで、取引関係を維持する必要があるのです。

ハイタッチは企業のさまざまな要望に応じる必要があり、場合によっては製品を利用しての戦略立案など、顧客の事業を理解した上でのコンサルティング業務を含みます。かかる人的コストは大きいでしょう。

【20】テックタッチを実施する

テックタッチは、LTVが低い顧客にITツールなどを活用して1対複数で対応し、効率的に契約を継続してもらうことで利益を上げようとするカスタマーサクセスの分類を指します。
主な手法として、オンライン学習サービスや、活用方法について触れたメ―ルマガジンなどがあります。

テックタッチは、以下のような状況の企業におすすめです。

  • 新規顧客獲得の施策を中心に行っており、成約後に問い合わせ対応しか行っていない。
  • ターゲットが多いが単価が安いサブスクリプション型サービスで、継続して利用してもらうことが重要な商材を扱っている。

比較的低単価のサブスクリプション型サービスでは、どれだけ契約を継続してもらえるかによってLTVが決まります。そのため契約後のサポートが重要になりますが、大勢の顧客に個別対応していてはリソースが足りなくなり、カバーできない部分がどうしても生じます。
そのため、オンラインの学習サービスや、疑問点を解消できるFAQページの整備、活用ヒントを得られるメールマガジンの配信などで、顧客が自ら学び課題を解決できるコンテンツを提供し、大勢の顧客をITの力でフォローする体制づくりが必要なのです。

テックタッチは一度整備が完了すれば大勢の顧客に一律対応が可能なため、ハイタッチよりもコストは安くなると考えられます。WebサイトにFAQページを追加したり、メールマガジンを送信する程度であれば月額数万~数十万円から可能です。

【21】新サービス・機能を紹介する

顧客の購入製品よりも上位の機能を持つ製品やサービスへの移行を提案(アップセル)したり、関連製品を提案(クロスセル)したりすることによって、既存顧客の売上単価を上げようとする手法です。

新サービス・機能の紹介は、以下のような企業におすすめです。

  • 納品先が限定されるビジネスで、ターゲットの数が少ない。
  • 新規の獲得が頭打ちになっている。

ターゲットの範囲が限られる商材を扱っている場合、そもそも獲得できるリードに限りがあるため、新規開拓は年々厳しくなります。売上拡大のためには、新規獲得以外の方法も考えなければなりません。
アップセルやクロスセルは、新規顧客の獲得よりも既存顧客の売上を伸ばすことを重視した手法です。新規顧客の獲得には大きなコストが必要なため、それよりも遥かに低コストで売上を伸ばすことができます。

アップセルやクロスセルの成功のためには、顧客についてよく理解し、顧客に寄り添いながら提案を行う必要があります。提案のための調査や様子伺いなどを行うため人的リソースは必要になりますが、基本的には営業やカスタマーサクセスの業務内で実践すると考えると、コストのかからない手法といえるでしょう。

【22】問い合わせフォームを整備する

顧客から気軽に問い合わせが可能なフォームを設置し、購買を検討している顧客の要望や疑問に応えたり、集めたデータを集積・分析して今後のサービス改善に生かす手法です。

問い合わせフォームの整備は、下記のような企業におすすめです。

  • サービスを改善していきたいが、改善すべき箇所を顧客からうまく収集できていない。
  • 顧客と関係を維持したいがあまりコストはかけずにヒントを得たい。

顧客に安心して取引を継続してもらうためには、顧客が製品・サービスを利用した際の不満や問題をいち早く察知し、改善やフォローが可能な体制づくりが必要です。
問い合わせフォームは電話ほど時間を取られず気軽に送ることができるので、サービスにトラブルが発生したときや、改善してほしい箇所など、顧客から情報提供してもらうための窓口にできます。
ツールにもよりますが、何百万円もかかることはないため導入しやすいのもメリットです。

問い合わせフォームは、月額数万円~数十万円でサービスを導入できます。フォーム作成機能が備わっているMAもあるため、導入の際は検討しましょう。

【23】ユーザーコミュニティを運営する

ユーザーコミュニティは企業が顧客に提供するコミュニティを指し、顧客同士が交流し、疑問点の解消やサービスの活用方法などを話し合える場のことです。
ユーザーコミュニティを運営することで、顧客の満足度を高め、取引を長期間にわたって継続してもらおうとする手法です。

ユーザーコミュニティの運営は、下記のような状況の企業におすすめです。

  • 解約率が高い。
  • ターゲット数が多く、単価が安いサブスクリプション型サービスで、継続して利用してもらうことが重要な商材を扱っている。

顧客数が増えるほど、全員に細やかなサポートを行うことが難しくなります。ユーザーコミュニティを運営し、顧客同士が交流し疑問を解決できる場を提供することで、製品・サービスを利用する上でのつまずきを減らし、顧客満足度を高めることができます。
また、コミュニティ内で高度な知識の交換が行われ、良質な体験が積み重なれば、コミュニティに対する愛着が増し、継続利用してもらえる可能性を高めることができます。

ユーザーコミュニティは、自社で制作した場合、百万~数百万程度は必要になります。また、月額でも運用費、メンテナンス費用などが必要になるため、月額費用についても数万~数十万円は見込む必要があるでしょう。一度立ち上げが決まれば余程のことがなければ止めることが難しいため、取り組む場合は慎重に検討しましょう。

6.BtoBマーケティングの手法を選ぶ5つの判断ポイント

BtoBマーケティングの23の手法について把握できたら、後は自社に適した手法を選ぶ段階です。
この章では、自社で取るべきBtoBマーケティングの手法を選ぶとき、どういった面に着目して判断すべきか、そのポイントを解説します。

大きな成果につながる箇所を優先的に改善する

手法を選ぶ際には、自社の業績を大きく改善できる手法を優先的に選択します。
つまり、自社の目標値と現状の値の差分を確認し、最もギャップがあるところを自社のボトルネック(課題)と見なして改善に取り組むのです。
最終的な目標売上額をKGIとし、その目標売上額を達成するために必要なKPIを逆算してから、現状との差分を確認してみましょう。

例えば単価10万円の製品について月間の目標売上額が1000万円であるとすると、達成のためには月に100回の受注が必要です。
100回の受注を目標とすると、受注率が50%だった場合は200回の商談数が目標になり、さらに商談化率が50%だった場合は400人の有望リードが必要になります。有望リードへの移行が25%であれば1600人のリード獲得が必要です。これを仮に目標値として、今度は実際の自社の現状と比較します。

▼目標値と現状のイメージ
リード獲得数 有望リード数 商談数 受注数
目標値 1600 400 200 100
現状 1200 400 100 50

実際の自社の状況がリード獲得数1200人、有望リード数400人、商談数100回、受注50回であったとすると、目標値との差分を比べてリード獲得数が足りていないことや、有望リード数は多いのに商談数に結びついていないこと(商談化する過程もしくはリードを絞り込む段階に問題がある)が考えられます。そうやって優先的に改善すべき箇所を推測できれば、その箇所に対応した手法を選ぶことで、成果を上げやすくなります。

業界や事業内容などによって設定する目標や計算方法には幅があるため、今挙げた考え方はあくまで一例です。BtoBマーケティングの手法をPDCAを回しながら行うために、現状を把握し、自社に適した形で目標値を設定しましょう。

▼目標値を設定する例
  • インプレッション
  • PV数
  • リード獲得数
  • 有望リード数
  • アポ獲得数
  • 商談数
  • 受注数
  • 継続利用月数

複数の手法を組み合わせる

BtoBマーケティングの手法は単体で完結することはあまりなく、基本的には複数の手法を組み合わせます。なぜなら、見込み顧客の購買プロセスのすべてをカバーできる単一の手法はないからです。

ソーシャルメディア広告やリスティング広告でユーザーの流入を誘い、ランディングページ内に設置したホワイトペーパーでコンバージョンを狙うといった形式はごく一般的です。
他にも、ソーシャルメディアでオウンドメディアの更新情報を公開してユーザーとの接触ポイントを増やしたり、セミナーの参加者にインサイドセールスが架電を行いニーズレベルをヒアリングしたりと、見込み顧客を誘導するためにさまざまな手法の組み合わせがあります。

単一の手法では売上を伸ばすという最終目標にまで辿り着かない可能性が高いため、複数の手法を組み合わせ、売上につながる流れを考えましょう。

成果を最大化できる順番で取り組む

マーケティングのプロセスを1章から【STEP1】~【STEP5】と紹介しましたが、手法はプロセス順に取り組むとは限りません。自社の課題を改善するための手法を、成果を最大化できる順番で行うべきです。

例えばリスティング広告を出稿しても、誘導先の自社サイトに資料請求フォームがなかったり、コンバージョンを計測できる設計がされていなければ、集客した人を素通りさせてしまい、広告を打った分が無駄になってしまいます。
この場合は、資料請求フォームやホワイトペーパーなどの分かりやすいコンバージョンポイントを先に準備してから、広告を打つという順番が正しいことになります。1章で紹介したプロセス順とは逆ですが、その方が取りこぼしを減らして手法の成果を最大限に発揮できます。

自社の課題を改善するため、成果が出やすい順番を考えて手法に取り組むことが大切です。

達成したい条件に合ったリードタイムの手法を選ぶ

手法によって、成果が出るまでのリードタイムは異なります。手法を選ぶ際には、各手法で結果が出るまでにどれくらいの時間が必要なのかを認識しましょう。

企業によっては、マーケティングに取り組み始めてから数ヶ月以内に一定の成果を求められる場合があります。短期間に結果を出すことを求められているのに、成果が出るまでに半年~1年以上かかるオウンドメディアから始めたのでは、短い期間内に目標を達成するのは難しいでしょう。

マーケティングをこれから始める場合には、スモールスタートで短期間での小さな成功を積み重ね、その実績を元にして長期計画が承認されるように働きかけ、リードタイムの長い手法に着手するやり方がおすすめです。

予算・人的リソースから選択できる手法を絞り込む

手法によって、かかる費用や必要な人員には大きな差があります。手法を選ぶ際には、自社の予算・人的リソース内でどの手法を選択できるかを絞り込みましょう。

マーケティングは基本的に大きなコストが継続してかかります。取り組んだ方が良いと分かっていても、予算が足りず体制を整えられなかったり、有効と思える手法を選べないという企業は多くいます。そういった場合は、自社内で少ない予算でも取り組める手法を選び、小さな成功体験を重ねられるようにしましょう。成功体験に基づきマーケティングの予算を増やす方向へ舵を切れれば、選択の幅も広がります。

ただし、自社に本当に必要な手法であると判断できたのであれば、コストがかかっても思い切って投資した方が良い場合もあります。低コストで実践可能という理由だけで自社にそぐわない手法を選んでしまうと、中途半端な結果に終わり、かえって費用を無駄にしてしまう可能性があるからです。

また、マーケティングを行う人員は専任のメンバーが複数名いるのが理想ですが、新設したばかりのマーケティングチームだと、企業によっては1人~2人程度で始まることもあります。その人数で全体の戦略設計を行い、複数のマーケティング手法を実践しつつ効果を測定して改善まで進めるとなると、簡単な広告出稿やメールを利用したマーケティングなど、取れる手法は極めて限定的なものになります。
人員の確保が必要な場合は、そのためにかかる費用も含めて検討しましょう。

まとめ

BtoBマーケティングにおける代表的な手法の一覧と、選択すべき手法を判断するポイントを解説しました。
BtoBマーケティングにはさまざまな手法がありますが、自社の課題を明らかにし、その課題を改善できる手法を選んで組み合わせることで大きな成果が期待できます。

どの企業にも予算や人的リソースの問題がつきまとい、最初は取れる手法に限りがあるのが一般的です。自社が選択できる最良の手段でもってBtoBマーケティングにチャレンジし、小さな成功を積み重ねるところから始めましょう。

野坂早希

野坂早希 ライター

アジタスに2022年入社。BtoBマーケティングの専門メディア「BeMARKE」でライターを務める。読者にとって分かりやすくためになる記事を届けるため、日々制作に取り組んでいる。

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