お役立ちコラム

営業DXで成果を上げるための全企業が取り組むべき実践6ステップ

「『営業DX』を実現して組織を改革すべきという提言を知ったけれど、営業DXってそもそも何をどうすることなんだろう?」
上記のように、今後の営業のあり方に悩むなかで耳にしたことはあるものの、「営業DX」が一体何なのかまでは分からないという方も多いのではないでしょうか。

「営業DX」は、ITの発達した現代において利用可能になったさまざまな技術を活用し、営業の生産性を高めるための考え方・取り組みです。
しかし人や立場によってその説明の仕方はさまざまで、しっかりとした全体像を捉えるのが難しくなっています。営業DXのコンセプトが素晴らしくとも、理解が曖昧なままでは良い成果を得ることはできません。

弊社アジタスでは、およそ3,000社のコンサルティング支援を行うなかで、多くの企業に「営業DX」推進についてのサポートを行ってきました。
その経験を踏まえ、弊社は「営業DX」を「営業活動とWebマーケティングを連携させ、デジタルツールなども活用しつつ、データを生かして営業組織の生産性を高めること」と定義しています。

本記事では、「営業DX」とはどういうことか、また、「営業DX」に取り組むには何から始めれば良いのかを詳しく解説しています。
「営業DX」について深く理解し推進することにより、旧態依然とした企業も時代に合わせた営業手法へと転換し、競合他社に負けない体制を作り上げることができるでしょう。
営業DXを実践するために、本記事を活用してください。

1. 営業DXとは一体何か

「営業DX」は、「DX(デジタル・トランスフォーメーション)」に属している言葉です。
営業DXは一体どのような意味を持っているのでしょうか? 本章では、弊社が定義する「営業DX」について、「DX」にも言及しながら解説します。

1.1 営業DXに明確な定義はない

営業DXは、実は明確な定義がなされている言葉ではありません。人によって営業DXという言葉の定義やイメージはさまざまで、統一された見解は存在しません。

もとの「DX」の定義に関して言うならば、経済産業省のDX推進ガイドライン(2018年)において下記のように定義されています。

企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること

要約すると、企業がデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズに沿ったビジネス体制・製品・サービスを構築することや、組織の抜本的な改革を行って競争上の優位を目指すことがDXであるとしているのです。
しかし、公的には仮にそのような定義がされているものの、現場でも同じ文脈で利用されているとは限らず、解釈にも幅があります。営業DXもまたDXと同様に解釈の幅があり、人によって指す内容のばらつきが大きい言葉なのです。

関係者の間で定義が定まっていない状態では、良い取り組みを実践していくのは難しいでしょう。そこで、まずは弊社が営業DXについて触れる場合の定義についてご紹介します。

1.2 弊社の定義は「データを生かした」生産性の向上

弊社は営業DXの定義を下記のように考えています。

営業活動とWebマーケティングを連携させ、デジタルツールなども活用しつつ、データを生かして営業組織の生産性を高めること  

この定義において、営業DXの目的とは営業組織の生産性を高めることです。
従来の営業のあり方と比較し、大きな生産性の向上を実現するためには、取得したデータを活用することが必要になります。そして、データを活用するために、「営業活動とWebマーケティングの連携」「デジタルツールの活用」を行う必要があるのです。

手段1:営業活動とWebマーケティングの連携

「営業活動とWebマーケティングの連携」とは、営業が成果を上げやすくなるようなしくみをWebマーケティングで構築し、また、営業活動で得られたデータはWebマーケティングに還元して精度を高めていくような連携体制を整えることです。

Webマーケティングは、大量の顧客データを効率的に収集するしくみ、データを生かして顧客を育成・絞り込むしくみの設計を可能にします。そのしくみに則った営業活動は、受注確度の高い見込み顧客への優先的なアプローチや、相手のニーズを捉えた質の高い営業を実現します。
さらに、営業は顧客への直接的な接触によって得られたデータを共有することにより、Webマーケティングを強化できます。Webマーケティングと営業活動が相互に補強しあうことで、営業効果を高められるのです。

手段2:デジタルツールの活用

「デジタルツールの活用」とは、データの収集・蓄積・分析を素早く簡単に行うためにデジタルツールを取り入れて活用することです。

デジタルツールは、Webサイトの訪問履歴やコンテンツの閲覧時間の可視化によるニーズの深掘りから、営業活動の受注・失注の商談履歴による原因分析など、データに基づいた企業のあらゆる判断をサポートします。
手段1で挙げたWebマーケティングのしくみを設計・改善していくためにも、デジタルツールの活用は重要です。

成果:営業組織の生産性を高める

「営業組織の生産性を高める」とは、データを活用してスピーディで満足度の高い顧客体験を提供できるようになることで、かけた時間的・人的コストに対する営業の案件化率・受注率・成約率などを高めることです。
具体的には、従来では100件の企業に電話をかけて10件のアポを取り、1件成約できれば良い方であったような企業が、100件の企業のうち電話をかける数を20件にして15件のアポを取り、10件成約できるような状態を目指すということです。

ITの発達にともない、さまざまな角度から営業活動を定量的に記録・蓄積・分析できるようになったことで、企業は顧客の購買活動の実態を従来よりも正確に捉えられるようになりました。
さらに、データに基づいたさまざまな施策が可能になったことで、「顧客が今何を望んでいるのか」が推測できるようになり、大量の顧客をフォローしながら個々に適したアプローチを行って顧客に快適な体験を提供できるようになっています。

営業DXとは、手段1:「営業活動とWebマーケティングの連携」・手段2:「デジタルツールの活用」でデータをフル活用し、満足度の高い顧客体験を提供できる体制に営業組織を変革することにより、従来よりもはるかに大きな生産性の向上を実現することなのです。

1.3 営業DXが取り沙汰されている背景

営業DXが取り沙汰されている背景には、顧客の購買活動の変化や、社会のデジタル化の進展があります。こうした環境の変化に適応するために、営業DXは注目を集めているのです。

現代では、スマートフォンをはじめとするデジタルデバイスの普及もあり、誰もがインターネットを利用して情報収集を行う時代へと変わりつつあります。購買活動のオンライン化が進んだことで、営業が介入する前に顧客が情報を集めるのは当たり前になっています。

一方で、こうした変化は、従来では不可能であった「情報収集の段階での顧客の追跡」をインターネット上で可能にしました。見込み顧客のニーズや購買意欲を活動履歴データに基づいて定量的に推測できるほか、大量の見込み顧客をフォローしつつ優先度の高い顧客を絞り込む施策も実行できるようになり、営業DXの実現による変化への適応が重要と見なされるようになったのです。

また、新型コロナウイルスの流行も、営業DXが取り上げられる契機になったと考えられます。
これまでオフラインでの施策にこだわりWeb施策に手を付けていなかった企業でも、対面の営業が難しくなったことにより、営業活動のデジタル化・オンライン化を進める必要に迫られているのです。

※顧客の追跡はCookieを用いますが、Cookieは個人情報保護の観点から規制が強くなっており、段階的に廃止される予定です。しかし、マーケティングにおける有効性を考えると完全になくなるとは考えにくく、代替技術が発展する可能性が高いと考えられます。

1.4 IT革命との違い

2000年ごろ、IT技術の発達が、個人・企業・社会全体に大きな変化をもたらしたことを「IT革命」とするムーブメントがありました。かつてのIT革命と現代のDXの大きな違いは、「業務プロセスそのものの改革まで含んで語られることが多い」という点にあります。

IT革命もDXも、理想としては「IT技術が活用されることにより、まったく新しい革命的な変化が社会全体(企業)にもたらされること」を志向した概念でした。
しかし実態としては、IT革命は既存の技術がデジタルで一部置き換えられた形にとどまり、IT技術による組織そのものの変革にまでは至らないケースが多かったのです。

実態としてのIT革命とDXの違いを説明すると、下記のようになるでしょう。

  • IT革命:既存の業務をデジタルツールで置換し、その部分を効率化すること。
  • DX:デジタルツールで可能になったことを活用し、業務プロセス自体を抜本的に更新して全体に大幅な効率化を生み出すこと。

営業DXでいえば、業務プロセスの改革とは、営業体制のあり方そのものを大きく見直すということになります。
営業DXは、ツールを導入し、業務の一部をデジタルに置き換えて終わりではありません。営業体制の設計にまで踏み込んだ改革を視野に入れた取り組みなのです。

2. 営業DXで成果を上げるために押さえたい3つのポイント

営業DXで成果を上げるために、最低限押さえておかなければならないポイントが3つあります。実践に移る前に確認しておきましょう。

2.1 データを活用できるインバウンド型営業へ転換する

営業DXでは、企業が顧客へとアタックして製品を「売り込む」アウトバウンド型の営業ではなく、顧客の側から問い合わせや資料請求などのアクションを起こしてもらうインバウンド型の営業への転換が重要です。

営業DXの核は「企業が大量のデータを取得&活用することが容易になった」点にあります。大量のデータ取得&活用によって、従来では難しかったインバウンド型の営業が多くの企業で実現可能になりました。
正確にいえば、アウトバウンド型営業でも、営業DXで生産性を高めることは可能です。しかし、インバウンド型営業が実現した場合の生産性と比較すると、どうしても伸びには限度があります。中長期的な目線を持つのであれば、いかに早くインバウンド型営業へ転換できるかが、今後の企業の生産性を大きく左右します。

では、アウトバウンド型営業とインバウンド型営業は、具体的にどのように違うのでしょうか。

▼アウトバウンド型営業とインバウンド型営業の比較
アウトバウンド型営業 インバウンド型営業
接触の起点 営業 顧客
接触の方法 テレアポ、メール、飛び込み営業、DM 検索エンジン(またはWeb広告・SNSなど)⇒自社サイト⇒フォーム入力、問い合わせ
フォローできる見込み顧客数 少ない 多い
顧客対応の優先順 肌感覚で判断 行動・属性に点数をつけて絞り込み

アウトバウンド型の営業は、ターゲットとしている顧客リストに対し、メールや電話、または飛び込みでアプローチする方法が主流です。しかし、個別のアプローチでは営業が対応できる人数に限度があります。また、リストすべてのアプローチが終わったら、新たにリストを用意するのは容易ではありません。

一方、インバウンド型の営業では、抱えている課題の解決策を求めて自社サイトを訪問した顧客が、必要なコンテンツを閲覧するためにフォームから個人情報を自ら提供してくれます。請求に対しての返信メールや後追いメールも自動化できるため、一度設計すれば大量の見込み顧客をフォローできます。
また、Webサイト上の行動や見込み客の属性をもとにしてアプローチすべき顧客であるかどうかを数値化できるため、優先度が高い見込み顧客を絞り込めます。成約の可能性が高い相手にのみ架電や訪問が可能であり、営業のリソースを商談などの重要な業務に割けるようになるのです。

2.2 施策の指針を「顧客体験の改善」にする

営業DXでは、「顧客体験(顧客の快適な購買体験)の改善」を指針にして施策を立案することが重要です。

営業DXのゴールは営業組織の生産性向上であり、そのためにインバウンド型営業へ転換する必要があることは前項で述べた通りです。しかし、営業という会社の内部を変えることばかりに目が行くと、最も大切な「顧客にとってどうなのか」の視点が抜け落ちてしまう可能性があります。

「顧客体験の改善」を指針として取り組むことで、顧客にとって優れた体験を提供できるような営業体制づくりが進みます。それは、結果として営業体制の効率化を進展させるのです。
例えば、顧客が製品の使用方法について不明点があったとき、疑問を打ち込むとAIが答えを返してくれるチャットボットが導入されていれば、顧客は電話やメールで問い合わせる手間を省いてすぐに答えを得られますし、企業も些細な疑問に対して逐一対応するコストを削減できます。「小さな疑問を簡単に解決できる」という顧客体験の提供が、営業活動の効率化も同時に実現したといえるでしょう。

また、顧客体験が改善されることによって「この企業から提供されるもの(製品・サービス・体験)は良質である」という信頼感が醸成されるため、事業全体に対する評価が高まり、おのずと多くの顧客が集まるようになります。結果、インバウンド型営業を実現しやすくなり、営業DXによって成果を上げられるようになります。

2.3 部門を越えて一丸となって取り組む

営業DXの実践のためには、営業部門のみが稼働するのではなく、マーケティング部門などの他部署と一丸となって活動する必要があります。

「営業DX」という言葉から、営業部門のみの改革のようにイメージを持たれている方もいるかもしれませんが、ここで言う営業は「売上を上げるための活動全般」という広い意味での営業と捉えてください。営業DXを進めるためには、顧客の購買活動全体に焦点をあてる必要があり、営業社員だけではなく、広報やマーケティングの担当者などの協力が必須です。あらかじめ認識をすり合わせて、全社体制で営業DXのための取り組みを実現できるようにしましょう。

3. 営業DX実現に向けて最初に取り掛かる6つのステップ

本章からは、営業DXに実際に取り組むにあたっての具体的な手順についてお伝えします。
実践にあたっては、マーケティング部門の方が実行に適している場合もあるため、営業部門とどちらが主導するかなど施策ごとにすり合わせる必要があります。いずれにせよ協力体制を取ることは必須なため、「全社で営業DXを実現していく」という意識での取り組みが大切です。

3.1 【STEP1】顧客について理解する

「顧客体験の改善」を基準として施策を行うために、最初に自社の顧客について深く理解する必要があります。
描いた顧客像にズレがあると、顧客像に基づいて立案する施策で成果を上げることが難しくなるため、非常に重要なステップです。
顧客理解は、(1)顧客の調査⇒(2)ペルソナの設定⇒(3)カスタマージャーニーマップの作成の順に進めます。

3.1.1 顧客の調査

自社の顧客について調査し、次項でいうペルソナを作り込むための情報収集を行います。「見込み顧客」と「既存顧客」のどちらも調査対象です。実態の把握のためには定量調査、物事の原因や心理的な側面の掘り下げには定性調査が望ましく、目的に応じて組み合わせながら適切な調査を行います。

▼調査内容の例
  • 抱えている課題
  • 価値を感じること
  • 不満に思うこと
  • 普段利用している製品・サービス
  • 行動履歴・習慣
  • 業界・業種・役職などの属性

調査方法としては、主に下記のような方法があります。

調査方法 内容
ユーザーテスト 顧客が自社サイト内で実際にはどのような行動を取るのかモニタリングする。現状の課題の把握に役立つ。
インタビュー 掘り下げるなら1対1、効率を重視するなら複数を相手にインタビューを行う。
アンケート調査 インターネット・電話・郵送などで回答してもらう。「はい」「いいえ」といったチェックで回答を得る。
過去の商談記録の分析 過去の商談記録を分析する。失注記録からは顧客体験の課題が、受注記録からは良かった点が可視化できる。
自社や競合の導入事例の分析 自社や競合の導入事例に基づき、ターゲットの抱えている課題やニーズについて分析する。

3.1.2 ペルソナの設定

収集した情報をまとめ、ペルソナを設定します。
ペルソナは、自社製品・サービスの代表的な顧客像をイメージし、まるで実在するかのようにプロフィールを作り込まれた架空の人物のことです。ペルソナを設定することにより、社内で顧客像の共通認識を持ち、施策を立案する上で顧客の心理や行動を推測しやすくなります。
また、「自社の製品を購入するのはどんな顧客か」を明確にし、その顧客に快適な営業体験を提供するためにどうすれば良いかの視点を持つことができます。

3.1.3 カスタマージャーニーマップの作成

作成したペルソナに基づいてカスタマージャーニーマップを作成します。
カスタマージャーニーマップは、顧客が製品・サービスを認知し、興味・関心を持ち、検討し、購買に至るまでの一連の顧客体験を可視化するフレームワークです。
カスタマージャーニーマップを作成し、顧客体験を可視化することにより、快適な顧客体験を実現するための施策検討がスムーズに行えるようになります。

3.2 【STEP2】自社の営業体制を分析する

作成したカスタマージャーニーマップに沿う形で自社の現在の営業フロー、施策を書き出し、自社の営業体制を分析して課題や改善ポイントを整理します。
マップに合わせて現状の施策を可視化することで、「顧客体験」を指針にした施策を実行できているかを確認します。

例えば、自社製品を認知してもらうための場として現状の施策が「展示会」「Webサイト」しかなく、既存顧客の調査結果も「自社を知ったきっかけは展示会」という情報がほとんどであった場合、認知のステージで「Web上で顧客との接点が作れておらず、多くのターゲットから認知すらされていない」という課題が考えられます。

また、比較・検討のステージにも至らずに顧客が離脱してしまっていることが多く、現状の施策が「ブログ」や「価格表」のみといった状況である場合は、「顧客が求めているコンテンツを提供できていない」か、「顧客を個別にフォローできるような施策を行っていないために、素通りさせるだけになっている」といった課題が考えられるでしょう。

以上のように、自社の営業体制を分析し、判明した課題をあるだけ書き出します。その後、課題をグルーピングしたり、重複した内容は統合するなどして整理します。

3.3 【STEP3】営業DXの方向性と目標を設定する

STEP2で整理した課題の改善を図るため、営業DXでまず何を変えていくかを決めます。また目標として数値も設定し、改善の指標にします。

例えば、STEP2で以下のような課題が見つかったとします。

  • 認知度が低くそもそもサイトへの流入が少ない
  • 問い合わせのほとんどはサブ製品Bが中心で主力製品Aの認知がない

以上のような課題について、「何を変えれば解決できるか?」の仮説を立てます。

  • 流入が少ない⇒ 自然検索で上位獲得をねらう施策
  • 主力製品Aの認知がない⇒ 主力製品Aの魅力を伝えられる施策

各課題にどのような施策が適しているかを考えまとめると、今回は「良質なコンテンツ制作でWebでのリード獲得数を増やす」を営業DXの方向性として定めることで多くの課題は解決できそうだ、という仮説に辿り着きます。方向性を固めたら、目標となる数値を現状と照らしながら設定しましょう。
具体的な実施内容は、次項で設定していきます。

▼方向性と目標設定の例
方向性 目標の例 実施内容
良質なコンテンツでWebでのリード獲得数を増やす Webでの月の獲得リード数◯◯◯件

3.4 【STEP4】Webマーケティングの立案と実施

STEP3で設定した目標を達成できるように、Webマーケティングの施策を立て、当てはめていきます。

「良質なコンテンツでWebでのリード獲得数を増やす」を営業DXの方向性として定めたケースで考えると、理想的な顧客体験と、実現のために必要な自社の行動は以下のような流れになります。

ステージ 理想的な顧客の行動 自社の行動
認知 顧客が課題を感じ、自然検索またはリスティング広告経由で自社サイト(自社メディア)に辿り着く。
  • 課題を解決できる魅力的なコンテンツ(製品A関連ジャンルのコンテンツ)を制作。
  • 検索上位を取る。
  • リスティング広告を出稿する。
  • Web広告で流入数を増やす。
興味・関心 良質なコンテンツに満足し、自分の業務に役に立ちそうなホワイトペーパーをダウンロードする。
  • ホワイトペーパーの制作と公開。
  • 獲得したリード情報から顧客のアクセスを分析。
  • 顧客の閲覧履歴からニーズがありそうなテーマを判断。
  • 関連セミナーをメールで案内。

こうした理想的な顧客体験に必要な施策一覧を書き出し、特に目標達成に関わる施策を中心にマーケティング施策を決めていきましょう。
今回の例でいえば、「ホワイトペーパー」がリード獲得の主要な手段となりますが、そこに導くための道筋がなければコンバージョンには至りません。見込み顧客の集客手段として、広告やコンテンツの制作がセットで必要になります。

他にも、ホワイトペーパーのダウンロードフォームの作成や、フォームから実際に獲得できた見込み顧客情報の管理、コンバージョン後も接点を保つためのメール配信などの作業も必要です。これらの作業には、マーケティング業務のサポートツールであるMAが活用できるでしょう。

マーケティング施策が固まったら、実行に移します。すべてを一度に実施するのは難しいと考えられるため、可能な施策から徐々に行っていきましょう。

▼方向性と目標設定に合わせて実施内容を書き出した例
方向性 目標の例 実施内容
Webでのリード獲得数を増やす Webでの月の獲得リード数◯◯◯件 コンテンツ制作、リスティング広告、ランディングページ、ホワイトペーパー、MA導入など

3.5 【STEP5】PDCAを回し勝ち筋を見つける

PDCAを回す間に「この条件、方法は成果が出やすい」という「自社の勝ち筋」を見つけられれば、勝ち筋を共有して、誰が担当する場合でも同じように良い結果を出せるようになります。
施策を行う過程で得られたデータをもとに効果を検証し、改善していくなかで「勝ち筋」を見つけられるように努めましょう。

3.5.1 実施結果から目標達成度を見る

目標の月間リード獲得◯◯◯件を達成するために、リスティング広告の出稿を一週間行った場合で考えてみます。実施結果の例を下記のように表しました。

▼実施結果の例
結果(1週目) 実施したこと 施策の結果
獲得リード数◯件
目標達成度:◯%
①リスティング広告
②ランディングページ制作
③ホワイトペーパー制作・設置
表示回数:◯◯回
クリック数:◯回
クリック率:◯%
クリック単価:◯◯円
コンバージョン数:◯回
コンバージョン率:◯%
コンバージョン単価:◯◯円

※リスティング広告の誘導先:自社制作のランディングページ
※リスティング広告のコンバージョン:ホワイトペーパーのダウンロード

実施結果から、まず「目標の達成度」を確認します。この段階で目標達成ができているのであれば、【STEP4】で立案した施策は成功といえます。施策をそのまま継続するか、より改良していくかを考えましょう。一度うまくいったとしても同じ効果が長期間継続できるかまでは分からないため、検証は忘れずに行っていく必要があります。

しかし、最初に目標が達成できるケースはまれでしょう。ほとんどの場合は、施策の実行によって得られたデータに基づき、達成できなかった原因を探って課題の改善を進めることになります。

3.5.2 各施策を検証し課題を導き出す

目標達成できなかった場合、目標を達成できなかった原因(各施策の課題)を探り、なるべく高頻度にPDCAを回して改善を進めていきます。
課題を発見するためには、集めたデータから課題を導き出そうとするのではなく、「◯◯が原因ではないか」と仮説を立て、データで検証することが大切です。検証には、アクセス状況を視認できるWeb改善ツールが役に立ちます。ページの流入経路、セッション数、離脱率、離脱箇所などをページ別に確認してみましょう。

▼結果
  • リード獲得数が目標に達しなかった。
▼課題発見の例
  • 【仮説1】リスティング広告で想定ほど流入が取れていないのではないか?
    • ⇒◎データでもリスティング広告の流入数が平均値以下だった
  • 【仮説2】ランディングページの途中で離脱されているのではないか?
    • ⇒◎ページ途中の離脱率が高かった
  • 【仮説3】入力フォームの入力項目数が多すぎて入力を嫌がられたのではないか?
    • ⇒△ランディングページをひと通り読んだ人がそもそも少ないため検証データ不足

3.5.3 課題を解決できる改善策を実施する

「課題」を見定めたところで、解決のための改善策を実行し、1回目よりも良い結果を出せるかどうかを検証していきます。はっきりと数値に改善が見えれば、施策の効果が出た可能性があります。

▼改善策実施後の例
結果(2週目) 実施したこと 施策の結果
獲得リード数◯件⇒5%アップ
目標達成度◯%
①リスティング広告
課題:流入数の少なさ
⇒改善策:検索キーワード変更②ランディングページ制作
課題:途中離脱の多さ
⇒改善策:レイアウト・内容変更
⇒単価は上がったが表示回数やコンバージョン率など他の項目はすべて上昇

3.5.4 蓄積した事例データから「勝ち筋」を見出す

さまざまな場面でPDCAを回し続けていれば、成功事例や失敗事例のデータが蓄積されていきます。蓄積した成功事例データの「共通項」を探したり、反対に失敗事例の「共通項」から良くなかったと思われる行動を書き出してNG行動リストを作ったりと、「自社の勝ち筋」を可視化してまとめていきましょう。

3.6 【STEP6】勝ち筋をツールでしくみ化する

自社の勝ち筋を整理できたら、ツールでしくみ化を行います。しくみ化とは、勝ち筋に沿った施策が誰でもいつでもスムーズに行えるように、再現性のある状態を構築することです。

下記は、「A:自社の行動(勝ち筋)」に対して、ツールでどのようにしくみ化を行うかの例です。
【1】【2】【3】に示したように、メールの配信条件を設定したり、ユーザーの見込み度合いを定量的に視覚化したりするならMAが役立ちます。【4】【5】に示したように、顧客と直接やり取りする営業手法のしくみ化を目指すなら、営業活動の記録・分析・共有ができるSFA/CRMが役に立つでしょう。

顧客の行動 A:自社の行動(勝ち筋) B:自社の行動(ツールでしくみ化)
【1】ホワイトペーパーダウンロード後、メールを見てセミナーに申し込み
  • ホワイトペーパーのダウンロード履歴がある相手にセミナー案内メールを送信。
  • ホワイトペーパーのダウンロード履歴を条件にセミナー案内メールをMAで自動配信。
【2】メルマガを登録して受信
  • アクセス数の多いコンテンツをピックアップしたメルマガを配信。
  • ユーザー行動履歴からニーズの高まりを推測し後のアポ獲得に活用。
  • アクセス解析ツールで毎月のアクセス状況から人気コンテンツを抽出。
  • MAでメルマガを定期配信。
  • 開封率やクリック率、アクセスしたURLの内容などの行動履歴データを蓄積。
【3】製品へのニーズが高まり価格表や事例を見る
  • 製品検討段階にある見込み顧客をいちはやく察知し、インサイドセールスに引き継いでアポを獲得。
  • 属性や行動履歴をもとに「見込み度が高い」と判断した見込み顧客をMAのスコアリング機能で通知。
  • MAと連携させたSFA/CRMに自動的に情報が引き継がれる。
【4】電話を受け商談を決める
  • 見込み顧客の関心が高そうなテーマについてインサイドセールスが事前に把握し、個別に架電を行って状況を伺う。
  • 電話結果をまとめてフィールドセールスに引き継ぐ。
  • SFA/CRMで共有されているトークスクリプトを確認しながらスムーズに架電。
  • SFA/CRMで蓄積、共有された見込み顧客情報を呼び出し閲覧しながらニーズを探る。
  • 架電内容が自動的に文字起こしされ記録される。
【5】オンライン商談で詳しく説明を聞く
  • 見込み顧客のこれまでの行動履歴からニーズを予測し提案に組み込む。
  • 好感触であれば積極的な接触を継続する。
  • 過去のやり取りの記録を分析し行動履歴をSFA/CRMで参照。
  • 商談の録画データをツールで分析し相手の態度から有望と判断。

営業やマーケティング担当者が勝ち筋すべてをツールで自動化でき、その自動化がスムーズな顧客体験を生んで、顧客の満足度を高められるしくみが成立している状態が理想です。しかし、現状ではツールが1から10までをこなしてくれるような完全な自動化までは難しく、個々の施策に人が入り、ツールを適切に利用していく必要があります。また、一度作ったしくみが間違いなく働いているかどうかもPDCAを回して検証した方が良いでしょう。

企業によって適切なしくみの内容は異なります。どうすればツールで「勝ち筋」をしくみ化できるかを考え、自社にとってベストの「しくみ化」を実現してください。

まとめ

営業DXは、デジタル技術の活用によってデータを有効利用し、顧客体験を改善し、営業体制の抜本的改革によって営業組織の生産性を高めようとする考え方です。
デジタル技術の発展はめざましく、企業を取り巻く状況は絶えず変化しています。営業DXに今取り組んでいる企業と、何もせずにいる企業の差は、今後大きく開いていくでしょう。どの企業も、営業DXに無関係ではありません。

本記事を参考に、ぜひ全社一丸となって、営業DXを実現してください。

野坂早希

野坂早希 ライター

アジタスに2022年入社。BtoBマーケティングの専門メディア「BeMARKE」でライターを務める。読者にとって分かりやすくためになる記事を届けるため、日々制作に取り組んでいる。

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